投資信託しかない! ―Only Toshin―

地道に着実に「資産形成」するなら、投資信託しかない。私はそう思います。

#2 つみたてNISAでは国際分散投資を(セゾン投信でインタビュー)

長らくお待たせしました、「投資信託しかない!」の第2回のインタビューでは、今年3月にファンド設定10周年を迎えたセゾン投信の中野晴啓さん(代表取締役社長)、市本宏さん(管理部長)のお二方にお話をお聞きしました。インタビュアーは投信ブロガーのrennyです。

 

金融庁の姿勢が180度、変わった!!!

 

中野:漠然と感じていることからいうと、10年前のファンド設定時に比べると「変わった」といえば随分と変わったことはもちろん多いのですが、マクロ、全体観からすると、ほとんど変わっていないとも言えるような気がします。

 

renny(以下R):個人金融資産で預貯金の占める割合からすると、確かにほとんど変わっていないかもしれませんね。

 

中野:我々セゾン投信も本当に微々たる影響しか与えられていないと感じますんで。諸手を挙げて「これから大変な変化が起きるんだ!」という確信を持ててもいないというのが率直なところです。でも、これまでで最大のチャンスが来たな、とも思っています。それはすなわち、金融庁のそもそもの監督のあり方、金融庁自身の考え方が180度変わったと感じていることがその背景にあります。

 

R:どんな点が変わったのでしょう?以前はどうだったのですか?

 

中野:以前とは大違いですよ。既存の業界のやり方を肯定していましたからね。もちろん、素晴らしいことをやっているなんて評価はしていませんが、「仕方が無いね」というのが以前の金融庁の姿勢だったのです。

 

R:黙認、追認という感じでしょうか。

 

中野:「お客さん(投資家)にも問題がある」という立場だったのです。

 

R:「投資家の勉強が足りないからこんな商品を買ってしまうのでしょう」ということですかね。

 

中野:「(金融機関は)法律に違反していることはやっていない。法令違反はない。」というコメントをはっきりと覚えていますよ。「ブラジル漬けなんてとんでもない話だけど、そのような選択をする投資家側にむしろ問題があるのでは」というのが一貫した金融庁の立場だと受け止めていました。結局のところ、金融庁は業界側の目線でしかものごとを見ていない、と当時感じていました。ミニマムスタンダードで是としていた。それが今は180度変わった。この変化は僕らにとって滅茶苦茶嬉しいことですし、金融庁、本当に変わってくれて有難いと諸手を挙げて歓迎しています。変化はここからじゃないかな。
この変化を、一時的なもの(=長官が変わったら元に戻るだろうという業界の声もあったり、しばらくは続くかもしれないがいずれは元に戻るだろうという声も多い)ではなく、抜本的な日本の資本市場の劇的な進化に変えていかなきゃいけない、という使命感のようなものを強く感じています。

 

R:ここまでのお話は、今年春の運用報告会でも熱心に説明されていましたが、説明を聞いていた投資家の反応はどのようにお感じですか。

 

中野:色んな場所で、最初は長期投資の話をし、金融改革とは何かということについて話をすると、ものすごく関心が高い。普通の人たちの中では「金融庁なんて自分には関係がない」という人が圧倒的に多い中で、金融庁が考えをもって懸命に変えようとしている、それがどのような意味を持つのかという話に及ぶと、「自分ごと」として受け取ってこの変化に自分自身がまず乗っかっていくことはいいことなんだ、と理解してくれる人が多いと手ごたえを感じています。金融庁のこうした変化を業界側から伝えている人はほとんどいないはずです。それだけにそこに情熱を傾けているんです。こうした変化を知ってもらうことが結果としてセゾン投信に良い風として戻って来るだろうという確信を持っています。こうした側面では手ごたえを感じています。

 

R:「こうした側面では」とのことですが、今一つ手ごたえが薄いという面もあるのでしょうか。

 

市本:メディアでしょうか。

 

中野:メディアは金融庁の変化にようやく反応し始めたところ。2年くらい前、メディアは金融改革に無関心だったと思う。ここにきて、森長官の特集が週刊ダイヤモンドに掲載される等でようやく始まったところじゃないでしょうか。これからもっと一般化していくと思いますよ。
セゾン投信はこれまで10年間、自分たちがリーチできるところで語りかけてきて、あるいは本を読んでくださって、評価はしてもらってきたが、やっと12万人ですから。

 

R: 日本国民の1,000人に一人。結構スゴいことだと思います。

 

中野:ただ、1,000人のうち、900人くらいは全然変わっていない。そう思えば、ムーブメントにはまだ遠い。

 

市本:10年経って大きく変わった感触は私もありません(笑)。ファンドを設定した2007年に日経の賞を有難いことにもらうことが出来て、その頃からメディアは売れる商品よりも顧客視点をもった商品がニュースバリューになる点で、そこは変わっていないと感じています。一方で、実際に売れているのはブラジルの債券であったり豪州のREITであったりと、高い分配金のファンド。何かテーマがあって、そこに投資家が集まるというのは変わっていません。

 

中野: この状況が劇的に変わるということは、業界自身の自己改革なくしてありえないんです。セゾン投信は「我々は既存業界に対するアンチテーゼ」と主張して、一定の成果をあげたとしても業界自体が今のままであればその成果は大したものにならない。業界自体が、金融庁の求めている、期待している姿に変化できればスゴいことになるでしょうけど、今業界の人たちと話していて心の底から「変わらなきゃ」と考えている人は、依然としてごく少数だと思います。

 

R: ブームになる必要はないと思うのですが、今までよりも少しペースを上げてより多くの人たちにセゾン投信の唱えてきたあり方が受け入れられるには何が必要なのでしょう。個人投資家も意識を変える必要があるように思うのですが。

 

中野: ある種の外圧のようなものが必要でしょう。金融庁、つまり行政という外圧が業界に対して有効に作用して欲しいなと思います。日本人には、まだ行政への信認のようなものがあって、「金融庁が言うのなら、そうなのかな」という人も多いのでは、と。これは一つの流れになっていくと感じています。

 

R: 「つみたてNISA」の対象商品選定では、金融庁は随分と踏み込みましたものね。

 

中野:金融庁の本気度を感じましたね。

 たまたま、8年くらい前に書いた本を読み返してみたんですよ。そこに書いてたことは今とほとんど一緒でした。そこで「将来はこうなるんだ」ということも書いていて、現に今、それに近いことになってきた。結局、振り返ってみることでしか、何が良かったかは分からないものだと思うので、今起きていることも、10年先になってみないとその評価はできないのだろう、と思っています。僕たちとしてはそこに向けて努力を続けていくしかないんですよね。それが社会的使命だと感じています。それと、もう一つ。今から10年後、全ての金融機関が良い方向に変化しているとは到底思えないのですが、全部がダメということはなくて、数社に1社、たとえば地銀だったら4社に1社くらい、危機感を持って方向転換するところも出て来るのではないか、という想像をしています。たとえば「つみたてNISA」に真剣に取り組んだ金融機関は、10年後に成果を出しているんじゃないか、と。それに追随するところが出て、変化が加速して、気が付いたら大きなうねりになっているかもしれません。
方針転換した金融機関が成功事例をつくって、少しずつ変化するということを金融庁も念頭に置いているのではないでしょうか。だからこそ「ベストプラクティス」を持ち上げて、知らしめて、という手法を採っているのだと思います。

もう一つ変化の要因になるものがあるとすれば、残念な社会的危機かもしれません。大きく円安に進んで資産が実質的に目減りする。気が付いたらセゾン投信の顧客はその環境変化に打ち勝っていたというようなシナリオです。

 

市本:高齢化が益々進む中、金融機関としては、これまでの顧客がどんどん抜けていってこれはマズいということになって、ようやく資産形成層に向き合うことになるんでしょう。

 

中野: 大きな危機があれば一斉に方向転換するのでしょうけど、今はそうではありませんよね。

 

R:自身の経験からの実感ですが、株式中心の投資信託をコツコツと追加投資しながら持ち続ければ資産形成できる、株式投資で資産形成という概念を私は腹の底から納得できています。しかし、日経新聞の見出しで表現されていたように、全体観としては「投機か預金か」と云われているのが実態で、株式投資で資産形成できる、これが常識になっていないように思っています。その一因は日本の株価の長期低迷にあるとも感じます。であれば、金融庁も日本の株価を何とかしたい、と考えているのでしょうか。

 

 


こちらのインタビューは2017年8月14日に行われたものです。

 

インタビューはまだまだ続きます。

 

金融庁は「国際分散投資」を推している?

「全額解約」はもったいないのになあ…

「つみたてNISA」でセゾン投信が飛躍するために

 

といった内容になっています。
 
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